道路交通法2026の要点を一気に把握する
夜の住宅街をいつもの感覚で走る――その「慣れ」が通用しにくくなるのが2026年です。
生活道路は原則30km/hとなり、自転車には青切符(反則金)の本格適用、そしてクルマが自転車を追い抜く際の「側方間隔に応じた安全な速度」義務が明確化されます。
さらに50cc原付の新車は市場から姿を消し、原付免許で乗れる新基準(〜125cc・4.0kW以下)へ移行。知識がそのまま実践につながるよう、ポイントを具体例とともに整理します。
まず押さえる全体像
短距離・日常利用ほど影響が大きい改正です。自宅周辺、通学・通勤路、送迎ルートを思い浮かべながら、自分事として読み進めてください。
改正の柱(3本)
- 生活道路30km/h:センターライン等のない地域の道路が中心。標識があれば標識が優先。
- 自転車ルール強化:青切符の導入(16歳以上)と、クルマ側の側方通過時「安全な速度」義務。
- 原付の世代交代:50cc新車は終息へ。原付免許で乗れる新基準原付(〜125cc・4.0kW以下)へ。
生活・通勤・送迎で響く場面
- 住宅街の抜け道や学校・塾の送迎路
- 通勤で使うセンターラインのない裏道
- 自転車通勤・通学(歩道/車道の選択、一時停止、合図)
クイック自己点検
- 慣れている生活道路に最高速度標識はあるか
- 自転車で「ながら」操作(スマホ・イヤホン)をしていないか
- 自転車追い抜き時、減速を習慣にできているか
- 2026年以降の原付の選択肢を理解しているか
生活道路は原則30km/hに
「標識がないから60km/hまでOK」という従来の感覚は更新が必要です。対象外の幹線や自専道を除けば、日常で走る道の多くが生活道路に該当します。
生活道路の見分け方(直感編)
- 対象になりやすい:センターライン・車両通行帯がない/家並みが続く/歩行者・自転車が多い。
- 対象外になりやすい:センターラインや車両通行帯がある一般道/中央分離帯がある道路/高速・自専道/最高速度標識で指定済み。
早見表(標識がなければ30が原則)
| 道路タイプ | 従来の感覚 | 2026年以降 |
|---|---|---|
| 住宅街の裏道(標識なし) | 〜60km/h? | 30km/h |
| 幹線道路(センターライン有) | 60km/h | 標識優先(従来どおり) |
| 自専道・高速 | 指定速度 | 指定速度 |
| 最高速度標識あり | 標識に従う | 標識が優先 |
安全運転のヒント
- 路地・駐車車両・見通し不良の手前で必ずアクセルオフ。
- ナビに裏道へ誘導されたら「30km/h基準」に即復帰。
- 雨夜や濡れ落ち葉は制動距離が伸びる。30でも余裕を。
メモ:迷ったら「標識がなければ30」。広く見えてもセンターラインがなければ生活道路と考えるとミスを防げます。
自転車の青切符と取り締まり強化
青切符は「反則金を納めれば刑事手続に進まない」制度。これが自転車にも適用され、16歳以上は違反内容に応じて反則金の対象になります。
反則金のイメージ(代表例・16歳以上)
- スマホ等のながら運転:約12,000円
- 信号無視・右側通行・歩道の無許可通行:〜6,000円
- 一時停止不履行:〜5,000円
- イヤホン・無灯火・傘差し片手運転:〜5,000円
- 並走:〜3,000円
積み上がりに注意:例)無灯火(5,000)+並走(3,000)+イヤホン(5,000)+スマホ注視(12,000)=計25,000円。
重要:自転車は軽車両。一方通行/一時停止/左側通行など車両の原則が適用されます。歩行者専用信号は進行不可(降りて押せば歩行者扱い)。
明日からできる「無事故ルーティン」
- 交差点は完全停止→左右確認→手信号。
- 夕方以降は前照灯+テールを常時点灯。
- イヤホンは原則オフ。通話・操作は停車して。
- 雨天はレインウェア。傘差し・固定具に頼らない。
高校生・保護者へ:16歳から対象。クラスで共有して「ちょっと」の違反を未然に防ぎましょう。
自転車追い抜きの新ルール:クルマ側の「安全な速度」義務
同一方向の自転車を追い抜く際、側方間隔に応じて安全な速度で通過することが求められます。数値基準は状況次第ですが、実務上は1.0〜1.5m確保と十分な減速が目安。確保できない場合は追い抜きを見送る選択が安全側です。
こういう時は必ず減速
- 対向車・縁石・障害物で間隔が取れない
- 夜間・雨・強風など視認・安定が悪い
- 初心者・子連れ・ふらつきが見られる
現場フロー(クイック)
- 後方・対向・側方をミラー+目視で把握
- 早めのウインカーと緩やかな減速で意思表示
- 待てるときは待つ(無理な追い抜きはしない)
- 余裕が生まれたら相手の挙動を見て静かに通過
双方の心得
- 自動車側:安全な速度義務。幅寄せ・クラクション強要は厳禁。
- 自転車側:できる限り左側端を通行。後方確認と合図で意思疎通。
50cc原付の新車は終息へ――新基準原付の時代
排出ガス規制の強化で、50cc新車は段階的に市場から消えます。代わって新基準原付(〜125cc・4.0kW以下)が原付免許で運転可能に。最高速度は従来どおり30km/h、二段階右折・二人乗り不可などのルールも踏襲されます。
50cc→新基準原付の違い(要点)
| 項目 | 50cc原付 | 新基準原付(〜125cc・4.0kW以下) |
|---|---|---|
| 排気量 | 〜50cc | 50cc超〜125cc以下 |
| 最高速度 | 30km/h | 30km/h |
| 右折方法 | 二段階右折 | 二段階右折 |
| 二人乗り | 不可 | 不可 |
| サイズ・価格 | 小型・比較的安価 | やや大型化・価格上昇傾向 |
ポイント:「速くなる」わけではありません。環境適合のため排気量を上げつつ出力を制限した新しい原付一種です。
用途別の選び方
- 近距離中心:新基準原付/電動アシスト自転車+雨対策
- 距離・幹線が多い:小型二輪(原付二種以上)を検討
- コスト重視:既存50ccを整備しつつ延命(部品供給の見通しも確認)
注意:電動キックボードは区分・装備・速度などルールが別。保険を含めて比較検討を。
現場で迷わない実践ノウハウ
生活道路30km/hに慣れる3ステップ
- センターラインなし=即30をマイルールに。
- 車間を広く、ブレーキは早めにやさしく。
- 視線は路地・歩行者・自転車の「動き出し」へ。
ありがちなNG
- 惰性で裏道へ進入し速度が落ちない
- 右左折時に対向自転車を見落とす
- ナビ注視で標識を見逃す
自転車通勤・通学の週1セルフ点検
-
- ブレーキ(前後)/レバーの遊び
- 灯火類(前後点灯)/反射材の位置
- タイヤ(空気圧・サイド亀裂)
- ベル(作動確認・鳴らす距離感)
覚えておくと便利:交差点で迷ったら一度降りて押す――安全・合法・トラブル回避に有効。
組織・学校・家庭でできる予防策
企業(営業車・社用車)
- 側方通過の教育を追加(ドラレコ映像で振り返り)
- 生活道路のルート見直し(通学路・高齢者施設周辺は回避)
学校(中高・大学)
- 16歳到達生徒に青切符の解説資料を配布
- 通学路の危険地点マップを共有(無灯火・並走・逆走が多い場所)
- 雨天はレインウェア推奨・傘差し禁止を徹底
家庭
- 親子で夜間走行の練習(ライトの見え方・見られ方)
- 自転車保険の賠償上限を確認(目安1億円以上)
ひとこと:多くの事故は「知っていたのに後回し」に起因します。チェックリスト化で継続しやすく。
